蜂蜜ミニ知識

マッドハニー病2014/01/06

 ハチミツは薬として使われてきた歴史があるほど、身体に良いものです。
 しかし、海外産ハチミツには、まれにツツジの仲間が持つ中毒物質グラヤノトキシンが入っていることがあり、これが原因で中毒症状を起こすことがあります。
 これがマッドハニー病です。

 ティースプーン数杯のハチミツで、めまい、過剰発汗、脱力、血圧低下、心拍の異常、嘔吐などを引き起こします。グラヤノトキシンを摂取した後、数分から数時間で急性中毒症状が現れます。

 マッドハニー病は、野生のハチミツを食べる習慣があるトルコの黒海沿岸部、ネパール高山地帯で主に発生してきました。患者数の統計はありませんが、世界中で症例報告があり、トルコなどで生産されたハチミツが、グローバル化によって世界中に輸出されたためだと、考えられます。

 『朝日新聞デジタル』2004年1月4日配信の記事「海外産はちみつご用心 花の中毒物質でめまい・血圧低下」によると、東京都内に住む60代の女性が、東南アジアで購入したハチミツをお湯に溶かして飲んだところ、マッドハニー病にかかってしまったそうです。
 ハチミツドリンクを飲んだ30分後、彼女は、呼吸困難や視覚異常などを起こし、数時間後には歩けなくなってしまっため、救急車を呼んだそうです。嘔吐や下痢はなかったそうです。

 このように聞くと、怖いと感じるかも知れませんが、マッドハニー病にかかっても回復は早く、死ぬようなことはまずないです。お酒に酔ったような軽い昏睡状態になるだけで多くの場合、病院での診察も必要ありません。
(ただし、心拍異常が起きるので、高齢者の場合は症例の女性のように救急車を呼んだほうが良いでしょう)

 私はハチミツに関する書籍や文献を10冊以上読んできましたが、マッドハニー病に関する記述を見たことはなく、朝日新聞デジタルの記事で初めてその存在を知りました。インド産の野生黒蜂蜜を食べたこともありますが、中毒症状が出たことはありません。どうやら、かなりマイナーな病気のようです。

 ツツジの仲間が持つ成分が原因ですので、マッドハニー病が怖い方は、いろいろな花の成分が混ざっている野生のハチミツや百花蜜を食べないようにしたり、海外産のハチミツ、特にトルコ産やネパール産のハチミツは避けるようにすれば、予防できます。
 日本での発症例は少ないので、あまり気にしなくても問題ないでしょう。