ハチミツといえば、普通は養蜂家が人工の巣箱でミツバチを飼育して、採取するのが一般的です。
しかし、中には違った方法で採取されたハチミツもあります。
そのうちの一つが、今回ご紹介する「野生黒蜂蜜」です。
私はこれを、近所のインド料理屋さんで偶然見つけました。
蜂蜜でインドを連想する人は少ないかもしれません。
テレビで「ハニーハンター」という人たちについてご覧になったことがある方はいらっしゃいませんか?
インドやネパールで、高所にある野生のハチの巣を、命懸けで採取し、蜜を得ることで生計を得ている人たちです。
有名なのは、ヒマラヤの高地で地上数十メートルもの絶壁を縄ばしごを登り、稀少なハチミツを取ってくる少数民族ですが、今回見つけた「野生黒蜂蜜」は、インドのハニーハンター達が非常に珍しい方法で採取しているものです。
場所は、インドのほぼ中央にあるメルガードという村。ベンガルタイガーも住む自然保護区の中にある、原生林に覆われた村です。農薬などの環境汚染はありません。
ここのハニーハンター達は、その技術を紀元前から受け継いできていると言われる、地元の少数民族です。
彼らは、地上30メートルにもなる木に登り、ロックビーという野生のミツバチの巣を採取します。巣の大きさは1メートルにもなります。その大きな巣の一部分だけを切り取って持ち帰ります。
根こそぎ取り去るのではなく、一部分を持ち帰るため、巣は2〜3週間後に再生され、そこにまた蜜が作られるため、ハチミツを取ることで環境が破壊されることがありません。
生態系を守りながら蜜を取ることで、森も人も共存するというこのスタイルは、インド政府や国連にも認められ、森林保護などを目的に支援を受けているそうです。
ロックビーが集めた蜜は、野生の森の花々の蜜。また、ミネラルたっぷりの花粉や樹液なども含まれていて、非常に栄養価が高く、カリウムやナトリウム、カルシウムが通常の蜂蜜に比べて数倍から数十倍も含まているそうです。
ハニーハンターの話を読むと期待がふくらんでしまうと思いますが、さて、肝心の味はどうなんでしょうか。
<色・香り・粘り>
さきほども写真を載せましたが、色は黒もしくは茶褐色。
ソバやクリと酷似していますが、比較的明るめです。
色の濃さは ソバ>クリ>野生黒蜂蜜 …といったところでしょうか。
蓋をあけて、鼻を近づけて匂いをかいでみます。
……やはり若干、ソバやクリと似通った、鼻をつくような刺激臭があります。
しかし、華やかで甘い花の香り、スパイシーさも感じられます。
確かに、原生林に咲く野生の花のにおいをかいだらこんな香りがするかも、と、思わず納得してしまいます。
スプーンですくってみると、見た目よりはサラサラとした印象です。
<風味>
では、試食です。今回も食パンに塗ってみます。
塗ってみると、パンの表面にスーッとなじんでいく感じです。
粘性は少なめ。
食べてみると、香りから想像した通りの味でした。
ソバやクリと似通った、独特の癖。
しかし、その癖は、ソバやクリほど強烈ではありません。
そして、ソバやクリとの違いは、その力強い甘さです。
花の香りを豊かに含んだ、華やかな甘味で、その甘さは食べた後も強く残ります。
国産の穏やかな風味の蜂蜜とは、明らかに趣の違うものです。
私がこの野生黒蜂蜜を購入するとき、「どんな味がするのですか?」とお店の人に聞いてみたところ、
「スパイシーというか…あまり美味しいものではないかと…苦手な人もいると思いますよ」
と言葉を濁していました。
確かに、この蜂蜜もクリやソバはちみつなどと同様、好みが分かれると思います。
しかし、私はこの甘さ、一度味わったら癖になる、なかなか美味しいものだと感じました。
正直、クリよりは食べやすいと思います。
<意外な効用・・・ノドに良い?>
他では聞いたことのない話なので、参考までに読んでいただきたいのですが……。
このハチミツは、ノドに良いです。
ちょうどこの野生黒蜂蜜を購入したころ、私は喉と鼻の風邪を引いていたのですが、何気なく、野生黒蜂蜜を寝る前に舐めてみたところ、翌朝、明らかに、喉のイガイガや咳が減り、症状が改善したのです。
私はあまり喉が強くなく、時々ひどく咳き込むことがありますが、この野生黒蜂蜜を舐めると、喉がスーッとして気持ちが良くなりました。
この蜂蜜と似た、ソバはちみつに喉に良い成分があるということが実証されたと別ページで記載しましたが、ソバはちみつよりも、口に入れたときの爽快感が勝り、症状にも強く働きかけるような気がします。
もし興味がある方がいたら、この野生黒蜂蜜、ぜひ試してみてください。
面白い蜂蜜ですよ。
そして、私のように「喉に効いた」という実感を得られましたら、ぜひご一報いただけると嬉しいです。